northern ligths
あくる日もあくる日も近所の公園で、イチョウの木に登り、17時ごろに夕刊を配達するおっさんから買い物帰りの奥さんを標的としていたのである。
様々なものを上からエアーガンで打ちまくっていた。
だいたい小学三年生くらいだろう。
もちろん玉が命中すると、地上から大声をあげてこっぴどく怒られることもあったが、強面のとびのにいちゃんに命中したことがあった。
そのときはにいちゃんは何も言わなかったけど、
後日、同じ公園でベイブレードで遊んでいると、突然後ろから以前のにいちゃんに声をかけられた。
鳥の卵が現場から見えるけんついてこい。
突然声をかけられたことと、思っていたにいちゃんの太くて優しい声色にびっくりして、黙ってついて行ってみることになった。
にいちゃんが他の職人に軽く挨拶をする。コーヒーとタバコを嗜み腰を下ろす男性が下からこっちをジロジロみている。
煙と粉塵で粉っぽい建物を作る現場は、なんだか汚れていて
見てはいけない社会に触れてしまったような、でも足を引き返すわけにもいかず、階段を登るにいちゃんに黙ってついていく。
最上部はすごく風が心地よかった。迎えの木の枝と枝から、距離にしてだいたい3メートルくらい先に無機質な白い卵があった。
初めてみる野生の鳥の卵に、一同は興奮していた。仲間の1人が卵を取ろうと腕を伸ばす。
一番悪そうな別の仲間がなんと、ベイブレードを投げつけた。咄嗟の出来事だった。
1つの卵が枝からづり落ちて地面に叩きつけられた。お母さんが目玉焼きを作るときに卵を割る音が遠くで聞こえた。
地面で目玉焼きができたらいいね
そんな冗談が聞こえた。にいちゃんを無視して目玉焼きを確認しにいく。
でも、その卵はすでにその卵の期間を終えていた。
アスファルトに叩きつけられて粉々にちった卵の殻とベイブレード、目を瞑ったなんだか水っぽいヒヨコ。
見てはいけないものを見た気がした。
生命が始まる以前のヒヨコの亡骸。
目の前の状況から様々な言葉にならない感情が頭の中で輻輳した。言葉がでるわけがない。
罪を犯したことだけは理解していたようで、とにかくその場から走って逃げた。
それきり、そのにいちゃんを公園で見かけることはなくなった。